2008年、サンフランシスコのアパートの1室から始まったAirbnb(エアービーエンビー)は、部屋を貸したい人(ホスト)と部屋を借りたい人(ゲスト)のマッチングサービス。
今や世界190か国に拡散し、洗練されたウェブ・コミュニティへと展開しました。日本でも新しいサイドビジネスとして注目されています。シュフティをはじめ、クラウドソーシングにも宿泊施設の予約管理やクリーニングの仕事依頼も見られるようになりました。さらにアメリカではホストの代わりに予約から清掃・管理のすべてを請け負う管理会社も発足し、ひとつのウェブサービスから派生した経済効果は計り知れないほど。発祥の地でありそのサービスがいち早く根付いた北カリフォルニアで、実際にAirbnbのホストとしてコンスタントに収入を得ているユーザーにインタビューをしてきました。
ワイナリー経営のサイドビジネスとして
お話を伺ったのは、カリフォルニアワインの名産地ソノマ郡でワイナリーを営むペンドルトン(Pendleton)さん。ご主人のマイクさんは消防士を退職し、ワイン作りに専念。奥様のジェニーンさんは、週の半分は医療関連の仕事、そして小学生のお子さんの学校や習い事への送り迎えは毎日という実に多忙な日々。
ご自宅は山あいにあるワイナリーで、ブドウ畑に囲まれたプール付きの豪華な邸宅。伺った午後にはご主人が白ワイン用のブドウを潰して皮や種を取り除く作業をしていらっしゃいました。この豪華なお宅の2部屋をAirbnbを介してゲストに提供しているということです。
画像1 ご自宅の外観
画像2 ブドウ畑を見渡す庭
ゲストからホストへ
Airbnbを利用して自宅の部屋を提供するきっかけは?
「私たち家族が2年前の夏休みにヨーロッパを旅行したときにAirbnbを利用して部屋や一軒家を借りました。そのときには自分がホストになるなんて考えてもいませんでした。昨年兄が再婚して、我が家で結婚式をしたのですが、お嫁さん側のご家族に『こんなゴージャスな家、B&B(ベッド&ブレックファスト)でもしないともったいないわよ!』と何度も言われたんです。それから少し考えるようになりました。」
いざ他人を我が家に泊めるとなると、心配ではありませんでしたか?小さいお子さんもいらっしゃるし。
「この家を買ったときに、思ったことがあって・・・。こんな大きな家は私たち3人だけのものではなくて、たくさんの人にシェアしてもらうべきだ、ということ。そういう意識が後押しして、Airbnbで部屋を提供しようと決めたんです。子どもも初めは知らない人が家に泊まりに来るということに緊張したり、テレビを我慢しないといけないなどストレスもあったようですが、今ではゲストがいると賑やかでうれしいようです。」
画像3 ジェニーンさん
ビジネスとしてのAirbnb
ゲストが来ないのではという不安はありませんでしたか?
「心配する時間もなかったわ。登録して20分で予約リクエストが来たの!もう翌日にはゲストが泊まりに来ました。感謝祭やクリスマスはちゃんと休んで、1月には家族でバケーションも行きましたが、それ以外はほぼ毎週予約が入っています。この1年で130組以上が泊まったわ。そう考えると自分でもびっくりね。」
登録して20分とはすごいですね!では続けていく上の苦労や問題はありますか?
「1年前は1部屋だけでしたが、もう1部屋も改装して2部屋提供しています。景色は良いけど、街からかなり離れていて決して便利な立地ではないので、ゲストが不便に思わないよう心がけています。簡単な夜食や朝食も提供して、もちろん我が家のワインも試飲できるのよ。1年経ってみてわかったことは、こうやってゲストをもてなしたり、いろんな人と知り合うことが楽しくてしょうがないってこと。私の中の“宿屋のおかみさん”が目を覚ましたって感じかしら。」
コミュニティとしてのAirbnb
ウェブサービスとしてのAirbnbをどう評価しますか?
「運営側からは丁寧なリスニングがあります。というのも近年に一気に加速したこの新しい業態に法がついて行っていないためです。自治体ごとに当局との話し合いがもたれるので、運営側も細かくサポートに入っています。」
アプリやウェブ上でのやり取りに関してはいかがですか?
「アプリがとにかく使いやすいです。予約のリクエストの応答もカレンダーも入金管理も簡単にできて、そういった事務的な作業にはほとんど時間がかからないのがいいですね。仕事をしながらでも続けられるポイントはそこかもしれません。それにゲスト、ホストともに一番大事なことが信頼関係。サイトのセキュリティと予約・入金のシステムがしっかりしているというのはもちろんのこと、Airbnbのユーザーはコミュニティとして独特で成熟した文化を持っていると思います。」
そのユーザー文化とはどういったものでしょうか?
「泊まりに来る人達はみな共通して親切で思いやりがあり、お互いを人として尊重しています。もちろん子どもやペットに対しても。ゲストだからと言ってわがままを言うような人はいませんね。世界を旅するユーザーが、そのときの出会いを良いものにしたいという気持ちがあるのだと思います。これまでのゲストでアメリカ人に次いで多いのが北欧からのお客様。いろいろな人からいろいろな話が聞けて刺激になります。日本からのゲストはまだですね。これからが楽しみです。」
おわりに
ご存知のようにAirbnbは宿泊予約サイトではなく、泊まりたいゲストと部屋を提供したいホストのマッチングサイトです。お互いが思いやりと信頼を持っているというコミュニティとしての文化が生まれたというジェニーンさんのお話しは印象的でした。これは日本でいうところの「一期一会」の精神に通じるものがあると感じました。テクノロジーの賜物であるこのサービスの根底には、人と人との信頼関係という昔ながらの価値観があるのですね。
Airbnbでのペンドルトン家のリスティングはこちら。https://www.airbnb.jp/rooms/3842600?s=r9ME
興味のある方はメッセージを送ってみてはいかがでしょうか。
画像4 Airbnbからのスクリーンショット